錯体化学若手の会関東支部2010年度後期勉強会

会員・非会員・年齢問わず興味のある方は是非おいで下さい。

開催日時:11月27日(土)13:30-17:30
会場:東京大学本郷キャンパス 化学本館5階講堂
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_07_j.html

参加費:無料(懇親会別途)

※web上での講演要旨は部分的に非公開となっております。
完全版は当日テキストとして印刷したものを配布いたします。



プログラム

13:30-13:35 開会挨拶

13:35-14:25 二瓶 雅之先生 (筑波大数理)「バルクから分子を切り出すことによる分子機能の発現」 [要旨pdf]

[講演概要]

三次元バルク構造をもつプルシアンブルー類似体は、シアン化物イオンを介した金属イオン間の電子的・磁気的相互作用により、室温分子磁石やスピン転移、強誘電性、エレクトロクロミズムなどの興味深い物性を示す。さらに、鉄-コバルトプルシアンブルー類似体は、光による電子移動誘起スピン転移(Charge Transfer Induced Spin Transition, CTIST)により、反磁性体からフェリ磁性体へと変化する光誘起磁性を示すことが知られている。我々は、多様な物性を示すプルシアンブルー類似体のユニット構造を、合成的手法により孤立分子として切り出すことで、バルク化合物では見られない分子特有の物性発現を目指して研究を行ってきた。シアン化物イオン架橋金属多核錯体は、プルシアンブルー類似体のユニット構造をもち、分子特有の離散的エネルギー状態と高い化学修飾性を駆使する事で、多重安定性や多重応答性、物性の自在制御などの特異分子機能の発現が期待される。我々は、ポリシアノ錯体と金属イオン、および補助配位子を適切に組み合わせることにより、多様な幾何構造と電子状態をもつシアン化物イオン架橋多核錯体の合理的合成を確立した。その結果、分子の幾何構造と電子状態に由来する多様な分子機能の発現に成功した。


14:25-15:15 北村 裕介先生(中央大理工)「DNAを鋳型とした協同的錯形成反応とその遺伝子解析への応用」

[講演概要]

我々の体内では、3つの連続した核酸塩基(コドン)の情報に対応したアミノアシル化tRNAがmRNA上に結合し、これを基質としてタンパク質が合成されている。核酸への様々な機能性分子の修飾が比較的に容易となった現在、その配列特異的なハイブリダイゼーションを利用することで、タンパク合成に限らず任意の位置に任意の物を導入することが可能であるため、核酸は集積密度が0.34 nm間隔の情報材料と見なすことができる。また、右巻きの二重らせん構造を形成すること、骨格部位は親水的であるが溝やコアは疎水的であること、リン酸や塩基など金属配位性部位を有することなどを考慮すると、核酸はある種の反応場として大変興味深い材料である。  ここでは、標的DNA上での金属錯体の特異的形成や標的DNAとの立体選択的結合に伴って発現する錯体の機能を利用し、標的DNAの検出、切断(ノックアウト)への応用を試みた。


15:15-15:40 休憩

 

15:40-16:30 稲垣 昭子先生(東工大資源)「可視光増感色素を持つ金属錯体の合成と光触媒反応」 [要旨pdf]

[講演概要]

太陽光エネルギーは無尽蔵で半永久的なエネルギー源として、その利用は大いに注目を浴びている。供給量自身も膨大で、地表面積平均に換算して、人類の年間消費量の1万倍ものエネルギー量が供給されているが、エネルギー密度が低く、供給が断続的な点がその利用を困難なものとしている。植物は、長い歴史の過程で、太陽光を利用する光合成プロセスを構築し、高効率でのエネルギー変換を達成している。このプロセスを人工的に実現する「人工合成」は、あらゆる分野における目標となっている。錯体化学の分野では、植物の光捕捉アンテナ部位の主骨格であるメタロポルフィリンや、ルテニウム(II) トリスビピリジル錯体を光増感ユニットとして含む錯体が多く合成され、光誘起エネルギー移動や、電子移動プロセスの研究が盛んに進められてきた。しかしながら、分子変換を目指した研究は、まだ研究途上であり、どのような触媒のデザインが反応に適しているかといった観点での分子設計は確立されていないのが現状である。私どもは、太陽光の主成分である可視光を利用して、様々な有機合成反応へ利用できれば、可視光を利用する手段のバラエティーが1つ増えるとともに、熱反応では達成できないユニークな反応を目指して、触媒設計と反応調査を進めてきた。今回は主に、錯体の設計指針と触媒反応に注目して発表する。


16:30-17:30 立間 徹先生(東大生産研)「金属ナノ粒子のプラズモン共鳴に基づく光電気化学反応とその応用」

[講演概要]

金や銀のナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)によって光を吸収・散乱する。我々は、この金属ナノ粒子と酸化チタンなどとの界面において、LSPRに基づく電荷分離(プラズモン誘起電荷分離)が起きることを見出した。本講演では、LSPRの原理や、それによって金属ナノ粒子が様々な色を呈し、また局在振動電場(近接場光)を生じるといった特徴について説明し、化学への応用例について解説する。さらに、プラズモン誘起電荷分離現象の原理や、それによって引き起こされる酸化還元反応(プラズモン誘起電気化学反応)と、その様々な応用の可能性(光電変換、光触媒、光応答性ゲル、多色フォトクロミズム、赤外情報記録など)について紹介する。

 

18:00- 懇親会 (海鮮居酒屋 はなの舞 本郷三丁目駅前店)



連絡先:久米 晶子 kume-at-chem.s.u-tokyo.ac.jp
東京大学大学院理学系研究科化学専攻
TEL:03-5841-4348